*「紛争の被害者を平和構築の担い手に」JCCPはアフリカ・中東の平和構築を支援する認定NPO法人です。

<ケニア事業>
暴力的過激化・テロを予防する事業(首都ナイロビ)

ナイロビ市イースリー地区における若者への過激化・テロ予防

<2019年4月更新>

事業の背景

ケニアでは、ソマリア発のイスラム系武装勢力アル・シャバーブなどによるテロ事件が後を絶ちません。2017年は97件のテロ事件が発生し、126人が犠牲となりました。大規模な襲撃事件としては、2013年9月のナイロビショッピングモール(死者数67人)、2015年4月ケニア北東部のガリッサ大学 (同147人)、2019年1月のナイロビの複合商業施設(同21人)があり、これ以外にも散発的な襲撃事件もたびたび起こっています。

ケニアの首都ナイロビ市にあるイースリー地区は、隣国ソマリアからの移民やソマリア難民を受け入れているダダーブ難民キャンプなどから流入する人々などにより、ソマリ系住民が多数居住する地域です。同時に、ソマリア系の過激派組織の活動の温床として見られており、テロ対策を強化する、ケニア政府による取り締まりが行われています。なかには行き過ぎた取り締まりも発生しており、取り調べ時の暴力、汚職行為、違法な殺害などにソマリ系の一般住民が巻き込まれることもあります。貧困地区に広がる貧しさに加えて、治安当局による差別や虐待への恨みや恐怖、悩みや問題を相談できる場がないことなどにより、社会への不満や人生への絶望感が多くの若者を苦しめています。結果、若者たちが過激派組織や犯罪組織の勧誘に共感するようになってしまい、テロや暴力行為に加わる要因となっていることも判明しています。また、勧誘の手段も多様化しており、奨学金授与、物的支援、結婚相手の紹介などと称して貧困層の若者を勧誘して戦闘員にするケースも報告されています。


事業概要

JCCPは、2018年3月から3 年間の予定で、イースリー地区で以下の3つのアプローチにより若者の暴力的過激化を予防する事業を実施しています。
①暴力的過激化のリスクが高い若者への心理社会的支援
②暴力的過激化予防のためのコミュニティ主体の行動計画の策定・実施支援
③若者の就業能力向上とキャリア構築支援

この取組では、次世代リーダーを育成し、コミュニティ主体の紛争・過激化予防の仕組みづくりを行うことで、住民自身の手で過激化を予防できるようになることを目指しています。さらに、過激派予備軍や、被害者やその家族への心理面に配慮した支援を担う心理社会的コミュニティワーカーを育成し、住民の手で過激化につながる問題の芽を摘み取ることを目指しています。


JCCPの取り組み

・暴力的過激化のリスクが高い若者への心理社会的支援

ケニアHP用.pngカウンセリングに関する基礎技能研修を受けた後、技術的なフォローアップ研修を受ける心理社会的コミュニティワーカーたち子どもや若者が過激な思想に染まりつつあることを早期に発見できるのは、例えば家族、教師、友人などの身近な人たちと考えられます。しかし、気づいてもどこに相談してよいのかわからなかったり、警察や治安当局に不信感を抱いていたり、あるいは相談することで逆に無実なのにテロリストであるとレッテルを貼られ就職や進学に影響が出ることを恐れるなど、様々な理由で相談ができないケースが多々あります。
そこでJCCPは、過激化につながる恐れのあるケースをいち早く発見しその芽を摘みとる仕組みを構築するため、その中心的な担い手となる心理社会的コミュニティワーカーを育成しています。不安や心理的な葛藤を抱えた若者が弱みにつけこまれて過激な思想に感化されないよう、個人の事情に合わせた細やかな個別カウンセリングを行ったり、心理社会的コミュニティワーカーが対応できない事象が生じた場合に備え、学校や病院等など専門機関と連携して対処する関係を構築しています。これらを通して、若者たちの悩みを早い段階で聞き、適切な支援を提供する仕組みをつくっています。


・暴力的過激化予防のコミュニティ行動計画の策定・実施支援

若者の暴力的過激化を予防するには、その地域に住む若者の社会文化的背景や、置かれた状況に即した戦略を立てる必要があります。ケニア政府は国全体の過激化予防戦略を策定していますが、イースリー地区の事情に特化したものではありません。また、イースリー地区で発生する治安当局の差別に対する恨みや恐怖が新たな過激化を生んでいるという現実は、国家戦略の中では必ずしも重視されていません。

そこでJCCPは、過激化予防の戦略を住民が主体となって策定することを支援しています。本事業で育成する心理社会的コミュニティワーカーの中でさらに中心的な役割を果たす若者を「次世代リーダー」とし、彼ら・彼女ら自身が同地区の若者が抱える課題を調査・分析し、過激化の予兆を察知して早期に予防するための仕組みづくりを行い、地区の中で若者を対象にした過激化予防の啓発イベントなどを実施することを支援します。過激化の影響を最も受けやすいイースリー地区出身の次世代リーダーたちが主体的に活動することで、より効果的に同地区の若者の過激化を予防することが期待されます。これらの活動を通じて蓄積された知見や経験は、イースリー地区の暴力的過激化予防フレームワーク(戦略)として、他の地域でも参考となるようなものに取りまとめていきます。


・若者の就業能力向上とキャリア構築支援

本事業で育成する計30人の心理社会的コミュニティワーカーと次世代リーダーの起業を支援することで、事業終了後もコミュニティ内で持続的に心理社会的支援および暴力的過激化予防活動が実施されることを目指しています。活動を担う心理社会的コミュニティワーカーと次世代リーダーの経済力が安定しなければ、事業終了後もボランティアベースで活動を継続するのは難しいことが過去事業の教訓から明らかとなっているためです。
加えて、対象コミュニティの若者のべ2,400人を対象に、キャリア構築と起業に関するセミナーを実施し、就業や起業を目指す若者が職業訓練校や必要な公的・民間の支援を得られるよう情報を提供します。参加した若者が仕事の斡旋や奨学金の授与等の機会を得たり、相談・助言の場所を得ることで、経済的・心理的に安定し、暴力的過激派組織に勧誘されにくくすることを目指しています。

この事業は、外務省のNGO連携無償資金協力の助成と皆さまからのご寄付によって実施されています。

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