*「紛争の被害者を平和構築の担い手に」JCCPはアフリカ・中東の平和構築を支援する認定NPO法人です。 

ケニア事業:コミュニティ平和構築

民族対立の根深いスラムでの人材育成を通じた心のケア、紛争予防、和解促進事業

現地の課題

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 多民族国家であるケニアでは、独立後半世紀に渡り、表面上は比較的安定した社会が維持されてきました。しかし、異なる民族の出自を持つ大統領候補らが2007年末に実施された総選挙の結果を巡って争ったことから、一般市民を巻き込む大規模な暴動が発生し、多数の死者・負傷者及び国内避難民を出す惨事となりました。

 首都ナイロビ市の東方に位置するスラム街「マザレ地区」は2007年から2008年にかけて最も激しい暴動が発生した地域の一つでした。2008年の暴動鎮圧後も、加害者と被害者の和解はなかなか進んでいません。このため、2013年3月の大統領選挙に際しても、暴動が発生するリスクが専門家によって指摘されていました。幸運にも大規模な暴動は確認されなかったのですが住民間の対立や相互不信は依然として根深く、貧困を起因とする犯罪や暴力も多発しています。現地の警察は暴力を適切に解決したり迅速に処理したりする能力が十分でないため、住民の間では警察や司法に対する不信感が強まっています。それと同時に住民間のささいなトラブルが一気に大規模な暴動に発展する危険性も残されています。マザレ地区には平和構築・紛争予防活動を体系的に実施する国際NGOが当団体以外にはほとんど無いため、紛争・暴力の予防に向けて、現地住民や行政関係者と共に継続的に取り組む必要があります。

本事業の取り組み

 本事業では、平成24年3月より3年間の予定で、マザレ・スラムの住民及びコミュニティ内の指導層や治安セクターの能力強化を目指し、同地域の紛争予防機能を段階的に強化しています。

活動

JCCPでは、平和構築分野のなかでも革新的な「コミュニティ平和構築」の手法を採用し、活動を行っています。

 暴力的な紛争に発展するリスクの高い問題やトラブルなどの不安定要素を地域住民自らが主体となって積極的に特定・回避・削減できるよう人材育成とツールの開発を行い、持続的に活動出来るような仕組みを構築しています。

 3つの柱(コンポーネント):①民族間の対立回避ネットワーク強化・評価②被害者・弱者支援③防犯居住環境整備、によって構成された活動を行っています。

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① 民族間の対立回避ネットワーク強化・評価

  JCCPはマザレ地区において、「仲介・調停・問題解決」に関する研修を実施してきました。その研修を受けた現地コミュニティ団体を中心に、スラムの住民が主体となって、紛争予防、問題解決能力の向上、及び紛争勃発時の被害を最小限に抑える体制づくりを目指しています。また各地域から男女計14名をフォーカルポイントとして選出し、警戒シグナルの早期発見と円滑な伝達が可能となる体制を構築しています。


② 被害者・弱者支援

  犯罪被害者や犯罪のリスクに晒されている住民などの社会的弱者に対し、住民の中から選出されたカウンセラー(コミュニティ・アニメーター)が心理社会的ケア、仲介努力、及び他機関への関連サービスの紹介を行い、被害者が尊厳を回復して社会的に自立できるような支援を実施できる体制を構築しています。また「チャイルド・セラピー・ルーム」を整備し、犯罪被害者や犯罪のリスクに晒されている住民や子供たちに対して、コミュニティ・アニメーターが中心となってカウンセリングを実施しています。


③ 防犯居住環境整備

 マザレ・スラム内でも特に治安が悪いとされている地域を対象に、女性の視点から見た居住環境の安全性のアセスメントや、女性による防犯パトロール隊の設立・能力強化や、住民参加型のイベント開催を通した啓発を行っています。ハード・ソフトの両面から平和を尊重する心を育てる環境作りを心掛けています。現地コミュニティ団体と共に、女性による防犯パトロール隊の研修や民族混成グループによる清掃活動・植樹活動、啓発イベント開催を通して、地域全体の防犯意識を向上させ、犯罪の起こりにくい環境づくりをしています。

最終目標と持続発展性

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 このプロジェクトはケニアにおいて大規模な暴動や紛争が発生する危険性が削減され、紛争が未然に防止されることを目標として、実施されています。現地コミュニティ団体と協働で事業を実施することで、当団体が保有する紛争予防・問題解決のノウハウが着実に移譲され、事業終了後も現地コミュニティ団体が率先して活動を継続できるようになることを目指しています。また地域住民の女性による防犯パトロール隊の結成は、自衛意識の高いスラムの女性住民の関心と合致するものであり、本活動をモデルケースとして隣接する他の地区にも同様の活動が伝播することが期待されています。更には警察への不信感が根強いスラムにおいて、警察や法律の専門家を講師として招いて防犯や法律に関する研修を住民に対して行うことで、住民が警察の業務を正確に理解し、住民と警察・司法機関との信頼関係・協力関係が強化され、本事業の成果が地域全体の治安部門や司法部門に波及することも期待できます。


助成元:NGO連携無償資金協力(外務省)