*「紛争の被害者を平和構築の担い手に」JCCPはアフリカ・中東の平和構築を支援する認定NPO法人です。

心のケア(Psychosocial Support: PSS)

教師クリスタベルの事例:カウンセリング技術を身につけて

クリスタベルは、ナイロビ市のキアンビウ・スラムに住む26歳の女性教師です。2014年から、スラム内のコソボ地区にあるバラカ・アカデミーという学校で教えています。学校には約400人の子どもたちが通っています。

以前は、カウンセリングの技術を持った教師も、カウンセリングを行う場所も学校にはありませんでした。そのため、どの子どもがどのような助けを必要としているのか、分かりませんでした。教師は何か問題が起きるたびに保護者を呼び出していましたが、保護者は日々の仕事で忙しくて来ませんでした。「教師は子どもたちの抱える問題の原因を見いだせず、また子どもたちも教師に心の中を打ち明けることはありませんでした。」と、クリスタベルは当時を振り返ります。

クリスタベルや同様の悩みを持つ教師を対象に、JCCPはカウンセリング研修を行いました。研修内容は、基本的なカウンセリング手法から始まり、薬物や虐待、近親者の死などのトラウマを持った子どもへの対処法、児童保護法、絵画などの芸術(アート)を用いたカウンセリングの手法であるアート・セラピーなど、幅広く網羅していました。クリスタベルも研修に参加して、学校で問題を抱えた子どもを助けるための技術や知識を習得しました。

研修後に「カウンセラー教師」として任命されたクリスタベルは、学校の一室をセラピールームとして使えるようになりました。そこで子どもたちが安心してカウンセリングを受けることができるようになりました。

ある日、小学1年生の男子児童デイビッド(仮名)が飲酒しているという情報を、クリスタベルは入手しました。本人に直接たずねたところ「二人きりでなら話しても良い」と答えたので、セラピールームでカウンセリングを行いました。すると、デイビッドの母親が自宅で自家製ビールを売っており、デイビッドは母親に内緒でビールを飲んでいたことが分かりました。そのため2度目のカウンセリングは母親も交えて行いました。母親は息子がビールを飲んでいたことに気づいていなかったため、驚き悲しみました。クリスタベルは、せめてビールの販売場所を自宅から離れた場所に移し、夕方帰宅した後は販売を手伝う人を雇う、という解決策を提示しました。デイビッドは母親とともにカウンセリングを6回受け、飲酒をやめ、クラスでトップの成績を取るまでになりました。

クリスタベルは今後、自分と似たような考えを持つ人々を集め、女の子の支援センターを開設したいと考えています。「10代で性的暴力を受けたり、望まない妊娠をしてしまったりする女の子が増えないよう、女の子が自分で身を守り、自立して生活できるように助けたいのです。」そう言って、今日も子どもたちの心の声に耳を傾けています。

クリスタベル.png
キアンビウ・スラムの学校教師クリスタベル

クリスタベルと子どもたち.png
クリスタベルと子どもたち