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ソマリア
〜 被災者たちの今 〜 半年後の彼らの生活はどう変わったか

〜 被災者たちの今 〜 半年後の彼らの生活はどう変わったか
<2014年2月掲載>

【 女性 】家庭内暴力を乗り越えて


 ファティマ(仮名)は、ソマリア南部出身の30歳の女性です。干ばつ被害を逃れて、プントランドのガロウェ市郊外にあるシャベルIDPキャンプにたどり着きました。彼女は地元の警察官と結婚しましたが、結婚生活は最初からストレスに満ちたものでした。夫は生活費をすべてカット(麻薬の一種)に使ってしまい、家庭をほとんど顧みなかったのです。彼女は幼い一人息子を食べさせるために毎日奔走しました。しかし日々蓄積していく不満と悪化する経済状況は、とうとう臨界点を迎えてしまったのです。

 ファティマは、夫との関係の転換点となった事件を今でも鮮明に覚えています。夫は彼女にかみつき、ナイフで胸を切りつけました。重傷を負った彼女は、心にも深い傷を負いました。「私には誰も頼れる人がいなかった」。

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 事件を知ったGBVフォーカルポイントのハワ(仮名)は、現地NGOと協力して、ファティマをガロウェ市内の病院に運びました。病院では、事前の取り決め通りに治療代と薬代は無料でした。さらに、事件の苦痛から回復するために、現地カウンセラーによる心理カウンリングを受けました。ハワや関係者らの継続的な支援によって、ファティマは次第に立ち直り、ついに夫との対話を再開しました。

 以前にJCCPが実施した問題解決研修を受講していたハワは、当事者間の対話による問題解決の重要性をよく理解していたからです。ファティマにとって自分を傷つけた夫との対話は容易ではありませんでしたが、真摯な対話を通して初めて夫の心の中の葛藤を知りました。夫もファティマの耐え難い苦しみを知りました。問題の根本的な原因が家族関係のあり方をめぐる価値観の違いであることを理解した二人は、あらためてじっくり話し合い、最終的にファティマは夫と和解して家族の元に戻りました。

 ファティマの決断は難しいものでしたが、いま彼女は自信をもって家庭生活を営んでいます。夫との会話も穏やかになり、一人息子と夫が一緒に過ごす時間も多くなりました。ファティマが住むIDPキャンプでは、こうした家庭内暴力が少なくありません。しかしハワのようなGBVフォーカルポイントや、現地の病院、心理カウンセラーなど、さまざまな関係者がファティマのようなGBV被害者を支援するために協力しています。

【 行政職員 】 研修を受けた内務省職員のその後


 ブルハン(仮名)は、プントランド内務省に勤務する男性です。家族と共にガロウェ市内に住んでいます。内務省では主に国内避難民(IDP)問題を担当しています。2011年干ばつ被害を逃れたIDPの流入が増加し、業務量がさらに増えました。海外からの支援事業が乱立し、IDPキャンプ内の住民間トラブルも増え、GBV被害の報告も届くようになり、疲労困憊する毎日を送っていました。

 2013年1月、ブルハンはJCCPが主催する問題解決研修に参加しました。IDPを主な対象として国連や国際NGOが行う研修には、お目付け役として参加するのが常です。このときも多くのIDP女性やGBVフォーカルポイントたちに交じって、後部座席から研修の様子をながめていました。

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 ブルハンは衝撃を受けました。研修では、彼の知りたかったことが解説されていたからです。紛争の原因を理解するための分析ツール、紛争を解決するための方法とヒント、紛争地で行う事業の評価基準や事業の進捗をはかる指標設定のコツなど、実践的な解説を行う邦人講師を食い入るように見つめていました。コーヒー休憩の際に、たまらず邦人講師に直談判しました。「うちの内務省の職員にもぜひ教えてほしい」。  

 その4か月後、JCCPは内務省職員を主な対象にした問題解決研修とモニタリング評価研修を実施しました。そのうち特に優秀な職員に対しては指導者養成研修(TOT:Training of Trainers)を行い、自ら現地人材を育成できるようにしました。

「これで地方勤務の職員たちにも自分たちで研修できる」とブルハンは喜びました。2014年1月現在、プントランド政府はモニタリング評価政策を策定中で、ブルハンら研修を受けた内務省の職員らも、積極的に政策づくりや人材育成に貢献しています。

 GBVの啓発はどうなったのでしょうか?2013年11月、邦人講師が内務省を訪問したところ、ブルハンが使っているノートを見せてくれました。表紙に「女性と少女を守ろう(Protect Women and Girls)」とソマリ語で書かれたノートです。JCCPの研修で参加者に配布した啓発用ノートでした。

「まだ使ってるよ。みんな羨ましがっていろいろ聞いてくるんだ。GBVのことも教えてやってるんだよ」

JCCPが企画実施した各種研修は、人材育成や政策づくり、そして啓発にも、着実に貢献しています。

【 少年たち 】啓発アイテムの効用


アリ(仮名)とジャマ(仮名)は、ガロウェ市内のダーウィッシュ小学校に通う少年です。ダーウィッシュ小学校は全校生徒1,246名(男714名、女522名)の公立小学校です。IDPや難民、現地コミュニティの子どもたちが一緒に学んでいます。

 二人は2013年にJCCPから文房具セットを受け取りました。ノートには英語とソマリ語で「女性と少女を守ろう」と、ペンには「平和のために団結しよう」と書かれています。文房具セットはJCCP邦人職員が小学校に直接持参して、教室の生徒や先生たちに対し、女性や少女を暴力から守ることの大切さを伝えました。

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 実は2012年夏に、アリとジャマは現地NGOの衛生研修に参加したことがあります。そこで習った正しいトイレの使い方を、イラストにして校内にポスターを貼りました。とくに下級生に好評だったそうです。さらに拡声器を使って衛生改善の必要性を伝えると、多くの生徒が校内で出たゴミを分別して収集するようになりました。先生たちも協力して、ドラム缶3個ほどを色分けして校庭の隅に設置したそうです。実際に、ほかの生徒たちの服装も最近は清潔になり、トイレの使い方もきれいになったそうで、トイレには水とバケツが常に置かれるようになりました。

 アリとジャマは、JCCPから文房具セットを受け取ったのを機に、今度はGBV啓発のためにイラストを描くことにしました。啓発技術研修を受けたGBVフォーカルポイントに相談しながら、「被害者の尊厳を傷つけない」「ポジティブな表現で訴える」などの注意をしてデザインをしています。校長先生は「教育は人生の基礎」であると強調し、こうした新しい知識を吸収していくことで、子供たちがより良い人生を生きていける、と二人の取り組みを歓迎しています。

 JCCPが実施した啓発技術研修や啓発用文房具は、子どもたちや学校関係者がGBVの知識を普及するために役立てられています。