*「紛争の被害者を平和構築の担い手に」JCCPはアフリカ・中東の平和構築を支援する認定NPO法人です。 

南スーダン
子どもの健康を薬物から守る

<2012年8月掲載>

 南スーダンは20年以上続いた内戦ののち、2011年7月にスーダンから独立をしました。しかし、首都ジュバではいまだに身を寄せる場所のない子どもたちがストリートチルドレンとして路上で生活する状態が続いています。彼らは孤独や空腹からくるストレスを発散するため、薬物(接着剤)の吸引や暴力を常習としています。また生きるために犯罪を繰り返しており、人間性・社会性が大きく失われています。

 JCCPは、こうした路上生活をする子ども・若者グループに対し、犯罪の回避、薬物の乱用防止についてコミュニティモビライザーといわれる啓発を担当する現地職員が啓発活動を行っています。今回は、ジュバにおけるとある日の啓発の様子をお伝えします。

 ある日の子どもたちへの啓発セッションのテーマは、「薬物吸引の危険性、そして誘いの断り方」についてでした。薬物の吸引が子どもの身体にどれだけ危険であるかを示し、仲間からの薬物の誘いに対してどのように断るかを学びます。 セッションの最初は、コミュニティモビライザーのアブラハムの説明から始まりました。ナイル川の両岸に架かった橋と川の中に大きな口を開けて獲物が落ちてくるのを待っているワ二のイラストを子どもたちに見せます。
啓発活動2.jpg「橋とワニの間にはネットが張られていますが、橋は今にも壊れそうな状態です。今、子どもたちはこの橋を渡らなければいけません。気をつけて渡らないと落ちてワニに食べられてしまいます。しかし、万が一、落ちたとしてもネットがあればワニには食べられずに助けることができます。」このイラストでは、橋(子どもたちの困難な生活環 境)、ワニ(薬物)、橋とワニの間にかけられたネット(知識・薬物吸引の誘いを断る勇気・仲間やコミュニティからの助け)などの例を挙げながら、薬物の怖さを他の子どもたちに伝えたり、薬物を吸引している友達にやめるように進言したり、また、誘われたら断るようにと説明します。アブラハムは親しみやすいように笑いながら説明しますが目は真剣です。彼は、薬物吸引を止めることを心から願って活動をしています。

 次に、コミュニティモビライザーと参加者による仲間から接着剤の吸引を勧められた場合にどうやって断るかについて寸劇が始まります。コミュニティモビライザーのアブラハムが接着剤の吸引を友達に勧める役を演じます。友達役は参加者の一人でリーダー格の少年アケッチです。彼は、2週間前にJCCPが行った啓発活動に参加し、接着剤の吸引を止めたばかりです。アブラハムは、ペットボトルから接着剤を吸引する真似をして、酔っぱらいのおじさんのようにフラフラ歩きます。その光景がおかしくて、見ている子どもたちは大歓声を上げます。アブラハムはアケッチをしつこく誘います。アケッチも最初は笑いながら断っていましたが、繰り返し誘ってくるアブラハムに対して真剣に断り、声も高まってきました。二人ともなかなかの演技で、見ている子どもたちも声援を送りながらも一生懸命見入っています。やがて、寸劇はアブラハムが逆にアケッチに説得され、接着剤が入ったペットボトルを捨てるということで終わ り、子どもたちからも拍手が湧きました。

 寸劇を見ていた子供たちの多くは、接着剤の吸引がいけないということ、それが身体に悪影響を及ぼすことは頭では理解していますが、路上生活での不安や孤独、空腹などを紛らわすために薬物に手を出してしまう彼らにとって、実 行に移すのはなかなか難しいのが現実です。このような活動を根気よく繰り返すことによっていつか彼らが薬物吸引をやめるよう促しますが、同時に必要なのは生活を立て直す支援です。

※この事業は、JCCP会員や寄付者の皆様からのご支援と、独立行政法人 国際協力機構(JICA)からの委託、および公益財団法人日本国際協力財団(JICF)からの助成により実施しています。