*「紛争の被害者を平和構築の担い手に」JCCPはアフリカ・中東の平和構築を支援する認定NPO法人です。 

南スーダン
職業訓練を通して、若者の自立へ

<2013年3月掲載> 

 2011年に独立した南スーダン共和国首都ジュバでは、長年に渡る紛争のため、読み・書き・計算などの基礎教育が十分に行き渡っておらず、教育機会を得るはずの子どもたちは、孤児であったり、家庭内暴力被害者であったり、国内避難民・帰還民、元子ども兵、未成年の母親、貧困層であるなど、多種多様な事情を抱えています。

 中には、結果として、路上生活またはそれに限りなく近い反路上生活を送る子ども、そして若者(ストリートチルドレン)も少なくなく、ジュバ市内で1万人以上と推定されています。彼らは、物乞いやゴミ集めをして日銭を稼ぎながら、住まいがゴミ収集所の近辺、木の下、墓場近くであるなど、非常に劣悪な生活環境にあります。

 こうしたストリートチルドレンを含む子どもや若者のほとんどは、必要な保護を受けられず、学校に行けません。その日暮らしの生活から抜け出すために、手に職をつけることを希望する若者も多いですが、周辺国からの労働者が多く従事する市場において、職を得ることや確かなスキルを身につけることも難しいのが現状です。そのため、社会性を身に付ける機会もなく、無力感や貧困に耐えかねて、犯罪や暴力に手を染める例が後を絶ちません。治安面においても深刻な課題となっています。

 そこで、JCCPは、犯罪や暴力の被害者となる可能性の高い女性や子どもたちなどに対して、現地政府や現地NGOと共同で啓発を実施すると同時に、路上生活者を含めた無職の若者らに対する職業訓練・就業支援を行っています。訓練では、若者たちが、専門講師によりスキルを身につけると共に、就業の意義を見いだし、就業意欲を高めることも重視しています。「職」を通した社会参加・復帰と経済的自立を促すことにより、若者が犯罪や暴力に手を染める危険性を軽減し、紛争後のコミュニティの安定を目指しています。

 現在は、18歳から25歳の若者40名が、成長産業の1つである給仕・サービス業の訓練を受けています。うち、ストリートチルドレンが2名、孤児院出身者が3名います。訓練生は、希望者の中から生活困窮度や就業意欲などを鑑みて、選出されました。40名の訓練は、2013年1月に開始されたところであり、現在就業倫理についての訓練も実施されています。給仕・サービスという、顧客と直接接することの多い職業にとって、スマートな配慮や機転、コミュニケーションは重要な鍵となります。また、「接客の身だしなみ」など、社会常識についての正しい理解も欠かせません。就業倫理研修は、寸劇によるケーススタディを踏まえて、訓練生とJCCPスタッフでの議論を通して実施されています。


P1010246.jpg例えば、とある日の「接客マナー」の講座では、まずJCCPスタッフが「悪い接客の例」、「良い接客の例」の2パターンの寸劇を演じることから始まります。「悪い例」では、料理を待たされた客にクレームをつけられたウェイターが、逆上して客につかみかかってしまう例。日本ではありえない光景ですが、自分自身が接客を受けたことがなかったり、喧嘩することに慣れてしまっている貧困層の若者は、上司や客に対して乱暴な態度に出てしまうこともあるのです。一方、「良い例」は、マネージャーと相談した後、お詫びの品として別のドリンクを提供するというものです。勿論、これらは一例で、極端な比較ではありますが、寸劇を使うと、訓練生も積極的な反応をみせます。しかし、寸劇後、「何故、客は怒ったと思うか」と訓練生に尋ねると、なかなか答えが返ってきません。訓練生の多くは、こうした研修は初めてです。少し経つと、「30分待たされたから」という声が聞こえてくるようになります。そこから、「何故、掴み掛かってはいけないのか?」、「では同じような事態に直面したときに、どうすれば良いのか?」、スタッフは訓練生に1つ1つ問いかけていきます。このようにして、講義形式で就業倫理を学ぶのではなく、「自分で考える」ということを基本理念に、研修を実施しています。

 今期訓練生の先輩にあたる前回の訓練修了生36名のうち、復学などの別の進路を選んだ男女9名を除くと、就職率は85%と良好です。23名の訓練終了生は、ホテル・レンストラン9箇所にそれぞれ就職が決まり、業務に励んでいます。訓練終了生の高い勤務評価を受け、今期訓練生の派遣要請を受けている例もあります。今期訓練生も、前回生に続くよう、さらに充実した訓練を実施して参ります。